勉強のために、本山ボウルの加藤恭子インストラクターと一緒に、スポルトの「健康ボウリング教室」にゲスト参加した。毎火曜日13:30〜16:30の6週間プログラム。
 1964(昭和39年)に我が国2番目のボウリング教室をハタボウリングセンターで企画担当したのを思い出す。報知新聞とのタイアップ企画だった。
そのときわたくしがたてた教室のコンセプトは「招待ボウリング教室からリーグへのパターンづくり」であった。  
 この実験の成功に気をよくしたわたくしは、ブランズウィックに1967年(昭和42年)移籍後、組織したブランズウィック会で同様のコンセプトをタイトルとし1974年(昭和49年)に全国にこの企画を発表した。マニュアルも3種類ぐらい作成発行しただろうか。
日本のボウリング業界最悪のこの時期、この企画は受け入れられると信じたが、全くの計算違いだった。面倒なことには手を出さないという、経営体質がそうさせたのだと思う。

 1960年代米国のボウリング業界は最悪の状態であった。そこから抜け出すための手段として米国ブランズウィック社が中心となり開発されたのがLTBである。
LTBはLEARN TO BOWL略であり、訳せば“ボウリングを学ぼう”という意味なのだろうか。  つまり、お客様を“開発”→“育成”→“固定”→させるシステムだ。 開発はセールスや広告などでお客様をつれてくる作業。育成は教室などで教えて面白さを伝える作業。固定はボウリングの基本的試合形式であるリーグに定着していくという作業なのだ。  米国に教わるまでもなくオレ達はすでに10年以上前から実行しているぜ、と威張っていたものである。しかし実際に米国のLTBに触れ学んでみて驚いた、ここまで心理的に計算され、考えられているのか?
 実際に開発担当者から学びたいと思った。幸いなことにその思いは叶い、LTB開発担当チーフのローシャンという男が日本に来ることになった。
はたして日本に於いてLTBが通用するのだろうか?
 考えてみればこの開発→育成→固定という作業は全てのビジネスにあてはまる。
「どのようなビジネスであれ、その目的は顧客を生み出し、維持することである」(ピーター・ドラッガー)  ブランズウィック直営センターであった名古屋スポルトを実験センターとした。実験担当はローシャンとすみ光保とのダブルス。そして高田誠が後から加わる。  
わたくしはまず近くの千速町小学校のPTAにセールスアタックをかけた。  コネを頼りに紹介されたPTA会長が言うには、「今時ボウリングなんてやる人はいないよキミ」だった。  「会長はおやりにならなくても、わたくしどものセンターにはお宅のPTAのお母様方がお子様と一緒に沢山お見えになります。」  本当は沢山なんてきてはいなかったのだけれど。 「PTA活動の一環として是非お取り上げいただきたい。」 なんてやりとりがあって、渋々会長にPTA厚生部部長を紹介いただいた。幸いなことにこの部長がボウリング大好き人間だった。最初のセールルスから約3ヶ月後に開催の運びとなった。  
あの最悪の時期に88名の申し込みを頂いたのだ。二つにグループ分けして双方ともわたくしがチーフインストラクターを担当した。  あるLTB卒業生の奥様がスポルトでアルバイトをするようになった。そして定年退職するまで社員として約30年近くをスポルトに勤務していたものだ。そんな方が何人もいらした。ハタのLTBからも同様のケースがあり、
プロになった人までいた。いろいろなセンターにLTBを指導して歩いた。
大阪イーグル、神戸六甲、名古屋本山ボウルしかり、全国ブランズウィック会(BW会)、日本ボウリング場協会など・・BW会は秋元泉と手分けした。

 さて、わたくしは何を言いたいのかというと、現在全国で行われているLTBはオレと米国の共同で創り上げたシステムだということなのです。つまりオレが家元だと威張りたいのであります。その割合にはまともにLTBを行っているセンターは少ない。

 時代は変わっています。ベーシックLTBを越えているスクールが出現しました。
それがスポルトのLTBです。開発者はスポルト取締役榎田勝志。特に彼の集客に関しての手腕はたいしたものです。教室プログラムは、担当するインストラクター能力やそのパーソナリティーによって大きく左右されるものですので何とも言えないのですが、優れたプログラムであることは事実です。とくにボウリングと健康との接点をいままでより深く追求しているところは榎田氏の勉強と苦労が伺われます。  

しかし残念ながらLTB本来の目的に添った教室を行っているセンターは非常に少ない。東海地区で3センター程度か? ハウスボウラーが楽しそうにリーグに参加しているようなケースにはまずお目にかかれない。LTBの目的を理解していないからなのだろう。
JPBAインストラクター部会でも3年前までは開発はセンターの役目で教えるのがプロインストラクターなどとうそぶいていたものだ。そんなプロは現場ではお断り。

 わが本山ボウルのインストラクター加藤恭子は接点がおありになるみなさまおわかりのように非常に優れた将来性あるインストラクターです。要は誠意でありお客様を思うハートがあるかないかです。  佐藤純子インストラクターは極端な恥ずかしがり屋で、当初担当をいやがった。現在少しずつなれてきて多少は自信がついてきたのではないか? 今後ますます素敵なインストラクションができるようになるでしょう。
みなさまの応援をお願いいたします。  わたくしも引っ込み思案であり、恥ずかしがり屋です。この年になっても直らない。役者出身のせいかはじめに台本がないと不安でしょうがない。というわけで多くのコンテを作成してきました。最新のものが1998年(平成10)場協会から発行したLTBマネージメントとLTBインストラクターです。
当センターでは現在これを使用しております。そろそろ改訂が必要です。
 われわれがスポルトで学んでいるスクールのいいとこを取り、本山の現場で生かしていきたいと思っております。  われわれは無料だからといって、いい加減にプログラムを創ってはいません。多くの時間をかけて資料を用意し、プログラムを工夫してきております。ですから、お客様もタダだからという気持ちでいい加減に参加いただきたくない。実技だけで講義やビデオなどには参加しない。などという方がたまにいらっしゃいます。このような方は申し訳ありませんがお断りさせていただいております。 

 この招待無料ボウリング教室に関してお客様からこんな声を頂く。  
@何故無料なのか? 何か下心があるのではないか?  
A押しつけで何かを買わせられるのではないか?  
B胡散臭い   
答え:  
@下心は無論あります。この教室に参加いただきボウリングのおもしろさにはまっていただければ、有料  で投げていただけます。現状教室参加者の60%以上の方がリーグにご参加いただき楽しんでおいでです。  
A押しつけは一切いたしません。全て参加者の自由であり、自己判断です。しかし、自主的に100%近くの方がマイシューズを購入。90%以上の方がマイボールをお持ちになられております。  
Bタダより高いものはない! とよく言いますが、本山ボウルの教室はまさにその通りで、結果的にボウリングにはまり、ゲーム料をお支払いいただいております。    
 有り難うございます。  しかしながら、まだまだボウリング業界のみならず様々な中小企業は苦しい時代なのが現状です。 “利益が上がらない会社は、お客様に対してもスタッフに対しても失礼です”  なぜならお客様に満足がいくサービスができないし、スタッフに対しても給料などを上げていくようなことができないからです。例えばハウスボールやピンにしても利益がなければ新しくすることができにくい。
 これは弊社のみではなく全ての企業に共通していると思います。これからも全員でがんばります。応援してください。

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すみ光保

すみ光保(すみみつやす)

■1935年東京都生まれ。株式会社スミ代表取締役。株式会社ジャパンボウリングプロモーション会長。
1967年にライセンスNo.4第1期生プロボウラーとしてデビューする。ボウリングインストラクターライセンスはマスター。
主な著作は、子供とボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(ぎょうせい出版)、VJボウリング(日本テレビ出版)、NBCJインストラクターマニュアル、ブランズウィック発行マニュアルなど多数。

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