誤解しないでほしい、これは年寄りの昔話ではないのだ。基本論だ。
昭和36年頃の話(ヤッパ昔話か?)。その頃、わたくしのホームグラウンドは昭和35年にオープンした池袋ボウリングセンター手動式14レーンだった。178程度のアベレージ(以下、AVG)だったわたくしは、当時とすれば立派なトップボウラーであった。岩上太郎が座間キャンプのメジャーリーグにスカウトされて投げているのを横目で見ながら嫉妬し、あこがれていた。岩上太郎はみんなの目標であり憧れだった。そんな時、朝霞の"キャンプドレイク"からお呼びがかかったのである。 「すみ、オレのチームで一緒に投げないか?」カテリーナというハワイ出身の軍曹だ。無論5人チーム。それが常識であり、基本だった。


チーム名(カテリーナ)
・リードオフ(カテリーナ本人, AVG175)・・・・キャプテンで好漢。
・第2投球者(彼の上司で大佐, AVG185)・・・・リーグでは威張れない。
・第3投球者(大佐婦人, AVG99)・・・・ふざけた奥さんだった。
・第4投球者(すみ 光保, AVG178)・・・・真面目なオレ。
・アンカー(ビル・ホッピー, AVG204)・・・・PBAメンバー。


 イイですか? デブおばさん(AVG99)と、米国の現役プロボウラー(AVG204)と一緒にチームをつくって連続40週間リーグを投げるんですよ!しかもキャッシュプライズリーグなのだ。軍では絶対的上司である大佐は、リーグではキャプテンのカテリーナが絶対なのだよ。AVGはカテリーナが下なのに。現在のわが国では考えられない。いつから我が国はこうなっちゃたんでしょうか? プロは偉いとばかりワッペン付けて威張っちゃう。トップクラスのボウラーは概して自分よりAVGが低いボウラーをバカにする。こんな輩はリーグボウラーの片隅にもおけないのであります。つまり、リーグとは人と人との絆づくりであり、弱者に優しいスポーツなのだ。技術が上の者は技術が下の者に対して、いたわり優しいのだ。それがボウラーズシップ!一旦編成されたチームはいつも一緒で次年度も出場するし、違うリーグにも一緒に投げる。たまに入れ替えはあるけれど、創られたチームはプロ野球と同じような? 少なくもその年運命共同体? になる。


 わたくしは「ビッグフォー」という7名編成のチームをもっていたし、高田誠が主宰する「おしゃれコーナー」というチームに所属もしていたもんだ。今それがない。5人チームリーグが無い。ましてチームが皆無。AVG99とAVG200と一緒に投げない。昔を知る年寄りとして悲しいことなのであります。わたくし思うに、リーグって絆づくりです。絆を辞書で調べると「人と人との断つことのできない繋がり、離れ難い結びつき」だそうだ。出会った数多くの縁の中から、限られた縁だけが絆になっていく。強い絆は、分かち合いとぶつかり合いの積み重ねで育まれます。ぶつかり合いを恐れていると、強い絆とはならないネ。絆があることで、その相手のことで大いに悩んだり、助け合ったりする。わたくしの大切な友人は全員といっていいほどリーグで一緒だったヤツばかりだ。協同体験が強い絆づくりには欠かせないのだ。強い絆づくり。そんなリーグを復活させようゼ、5人チームリーグだ。チーム編成はスペア入れて6〜8人程度。
「1レーンに5人も・・・・」と今のボウラーは怒るだろう。リーグは5人なのだ。今年の1月号にも書いたけれど、設備そのものも、5人で投げるように設計されているのだ。ちなみにアメリカでは5人チームが主流だ。
昔、ABC(アメリカン・ボウラーズ・コングレス)では、5人で登録しなければ会員になれなかった。シングルス、ダブルスのリーグは無いのであります。なにも米国の真似をする必要はないのだけれど、人との絆を育むには5人チームが最適なのです。5人チームで3ゲーム、約2時間半を楽しむ。 問題は業界がリーグを学んでいないということである。例えばこんな質問をしてみよう。


1.リーグにおける6種類の基本的ポイントシステムとは?
2.総当たり戦とラウンドロビン戦の長所欠点とは?
3.TEAM-HDCPとIND-HDCPの違いとは?
4.キャプテン会議の基本議題は?


止めよう、こんなことがわからずしてボウリング場スタッフは務まらないし、プロのインストラクターではない。キャッチボールも楽しいけれど、本当の野球の楽しさは9人でチームをつくり、相手のチームと戦ってこそ面白いし楽しい。ただ転がしているのは野球でいえばキャッチボール。ボウリングにおける試合、それは唯一リーグなのだ。トーナメントでもない。唯一リーグなのです。5人チーム。プロトーナメントはボーナスポイントシステムでほとんどが行われる。これはリーグのポイントシステムの応用なのである。つまりトーナメントと称していてもベースはリーグなのだ。ラウンドロビンってリーグでの総当たり戦システムだ。第1、勝つためには30ゲーム以上投げねばならないし、その裏付けはAVGだ。 リーグも最低30ゲーム以上投球して結果を競う。毎週決まった曜日の決まった時間拘束されるの無理だ。しかも30週以上とは・・・・ボウリング場経営者がリーグを知らないから、知らないお客さまのそんな声を鵜呑みにする。トリオ以上のチームリーグやってみな、どんなに楽しく絆づくりができていくか・・・・ヤッパ年寄りの昔話か?え?



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すみ光保

すみ光保(すみみつやす)

■1935年東京都生まれ。株式会社スミ代表取締役。1967年にライセンスNo.4第1期生プロボウラーとしてデビューする。ボウリングインストラクターライセンスはマスター。
主な著作は、子供とボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(ぎょうせい出版)、VJボウリング(日本テレビ出版)、NBCJインストラクターマニュアル、ブランズウィック発行マニュアルなど多数。

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