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 毎年5月〜6月になると新人プロからの挨拶状が届く。お定まりのフォーマット・・・・一体何のための挨拶状なのだろうか?


 拝啓 新緑の候、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。さて、私こと、この度第○○○回プロボウラ−資格取得テストに、合格することができました。これもひとえに皆々様の暖かいご支援の賜物と、深く感謝致しております。まだまだ未熟者ではありますが、これからはプロボウラーとしての自覚を持ち、精進努力する所存であります。何卒これからも御指導、ご鞭撻、そして御支援賜りますよう宜しくお願い申し上げます。まずは、略式ながら書中をもってご挨拶申し上げます。敬具


 とまァこんな定型文だ。一体何のためのご挨拶なのか? みんながやってきたからヤルのだろうか? あまりにも同質性、右へ倣え精神。みんなで渡れば怖くない有様。ファッションクラブのモデル紹介のページぐらい参考にしたらどうか? だってプロとして自分の得意分野を売っていくことになるのではないか? 違うのか? 単なる礼儀としての挨拶? そんな礼儀なんていらないのであります。わたくしに言わせれば礼儀にもならない。ハガキを送ってくれたプロに会ったとき挨拶できますか?これはひとつの例でありまして、わたくしの言いたいことはこうだ。


「時代は正にヘテロジニアス [異質性] の時代でありながら、日本人は、特にわが業界はホモジニアス [同質性] から抜け出せていない」ということであります。まず前例がないと踏み出せない。みんながヤルから安心してやれる。そんな次元から抜け出せないでいるとますます時代においていかれる。まさにわが業界がそうなのではないか? いや大多数の日本人が価値観においてはいまだにホモなのである。あるいはわがセンターもそうなのかも知れません。そうなのです。 ラウンドワン(以下R1)が先に行っているのは、そうしたヘテロな視点を杉野社長がもち続けてきているところにある。杉野社長を第1号センターの支配人時代から存じ上げているが、とにかく勉強家だった。いまでもそうだ。しかし正直な話し、ここまで成功するとは思いもよらなかった。 敬意である。尊敬である。


 だがしかし、我がスーパーボウル高松から直線距離で約4キロの地点に3月10日、R1がオープンした。影響大である。最新の設備、デザイン、現代センス、アソビアイテムのクロスオーバー、企画力、スタッフ教育、スケールメリット、お陰で大きな影響を受けている。何をとっても勝ち目はない。さてどうするか?だからってラウンドワンを真似たって成功するわけはないし真似ることもできない。 ボウリング場経営の能書きをコイてきた者として引き下がりたくない。6月に2回R1を視察した。多分予定の集客ができていないとみた。必死のようだ。だから凄い。あまり必死になられちゃ益々我々が困るのだが・・・・。それは別として我々は良い意味で戦わねばならない。これはウチのセンターばかりではない。R1はすでに76ヶ所だ。その2〜3倍以上の既成のボウリング場が影響を受けているだろう。30センターに達したときR1社内研修を担当させていただいた。その時、杉野社長はわたくしにこう述べていた。「どうしても100センターまでは持っていきたいし、もっていく。100は日本のボウリング場数の10%。そこまで行けばR1の一投手一投足、すべての動きが業界にまともに影響を及ぼすようになる」と。彼はその目標を達成しつつあるのだ。まさに敬意である。


 さて、巨大R1と戦うにはどのような方法があるのか?わたくしには秘策がある。考えがある。答えが出るのは約1年先になると思うが絶対に負けたくないし負けない。ただしそこまで保てればの話だが?  お金さえ沢山あればニューコンセプトで対応できるのだが、我々にはアイデアがあってもその体力がない。だから違ったアングルで勝負する。だから1年先を見ていていただきたいのであります。秘策が成功したあかつきには伝授しよう。ニューコンセプトを実現するには資金がいるのだが、資金があってもそこに目を向けない経営者が多い。多いというより皆無といった方がいいのかも知れない。新しいものに手を付けるのは誰しも怖いのだ。その恐怖をR1は克服してきたからこそ今がある。わたくしの推理ではR1も現在すでに限界を感じられているはずだ。その限界をどのように打破されていくかが実は見ものなのである。すでにR1に勝っているところも出現しているようだ。我々は少し違ったアングルからR1といい意味で戦っていく。それが業界のためにもなっていくはずである。上手くいくか行かないか・・・・さてお立ち会いだ。それは、我がチーム力にかかっているし、チームを牽引するディレクター力、そしてわたくしの考え方にかかっているのであります。オレたちゃーボウリングの専門家であり、経営のど素人だ。「素人の発想とプロの技術」? ホモじゃなくてヘテロだ!



 上記の原稿を現場に送信したのが7月10日。書いたのが6月半ば。昨日7月13日に、本年度プロボウラーになった吉田樹弐亜 氏親子に会った。 [らばーそうる] という素晴らしいブログでの交流がキッカケである。1番新しいプロボウラーと1番古いプロボウラーとの出会い。面白かった。驚きだった。心強かった。嬉しかった。新鮮だった。わたくし同様、こんな常識のないプロボウラーに出会ったのは初めてである。彼はきっといじめられるだろう。先輩と称する輩からいじめに遭うだろうと言うことは想像にかたくない。彼曰く


協会は何で挨拶を強要するのか?
しかも何故最敬礼でなくてはいけないのか?
何故新人プロとしての挨拶状を発送しなければならないのか?
何故服装を規制するのか?
何故試合時ユニホームを4着義務づけるのか?
何故洗濯してはいけないのか?
何故同じプロなのに新人だと発言権が制約されるのか?
何故多くの先輩プロは威張りたがるのだろうか?
C級インストラクターが何故ライセンスの条件になるのだろうか?
公認大会が行われているのに気づかないのは何故だろうか?
後輩には怒鳴ればいいと思ってるプロがいるのは何故だろうか?


 全くもっておっしゃる通りなのだ。既成概念から見ると常識のない吉田 樹弐亜。なんてステキなヤツなんだろう。常識のない仲間ができて嬉しい限りである。


 さて、同質価値観から脱却できない、ホモジニアス種族。仲間を上と下、つまり上下関係でしかみられないプロボウラー。だから先輩の前では何も言えず、後輩に威張る。そんな塊であるプロボウラー組織をぶっ壊したい、と思いつつわたくしは3回もチャレンジして敗退してきた。そんな楽しい絶望の中で若い仲間に出会ったのだ。お楽しみはこれからだ。



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すみ光保

すみ光保(すみみつやす)

■1935年東京都生まれ。株式会社スミ代表取締役。1967年にライセンスNo.4第1期生プロボウラーとしてデビューする。ボウリングインストラクターライセンスはマスター。
主な著作は、子供とボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(ぎょうせい出版)、VJボウリング(日本テレビ出版)、NBCJインストラクターマニュアル、ブランズウィック発行マニュアルなど多数。

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